- 調節斜視や弱視のお子さんがいる
- お子さんが遠視の治療中
- お子さんが初めて眼鏡作成予定
この記事は、子供の目の精密検査で調節麻痺薬を使用する理由について書いています。
眼科勤務10年目、視能訓練士の私が、こんな疑問にお答えします!
まず先に結論をお伝えすると、子供の目の精密検査で調節麻痺薬を使用する理由は、眼の調節機能を休ませるためです。
大人と違って子供は調節する力が強いので、調節麻痺薬を使わないと正しいデータが取れないんです。
これから詳しく説明していきますね。
何故子供の目の精密検査に調節麻痺薬が必要なの?
人がものを見ようとするときには、目の中の筋肉が緊張してレンズの厚さを増し、ピントを合わせます。
この働きを調節といいます。
目の屈折度(遠視・近視・乱視の度)は、調節を休ませた状態で決められます。
子供の場合、調節を休ませることが充分に出来ないので、普通の方法で検査をしても正確なことは分かりません。
そのため、子供で屈折の検査をする場合には、調節を休ませる目薬を点眼したうえで検査をする必要があります。
この精密検査を怠ったために、実は遠視であるの弱視とか近視と誤診をされたり、度の合わない眼鏡をかけている子もいるのが現状です。
正しいデータを出すためにも、子供で視力が悪い場合や斜視の場合には、この目薬を点眼して検査をする必要があります。
目薬をすることによっておこる目の変化
調節麻痺薬には、次の4つの副作用があります。
- ピントが合わせにくくなり、特に近くが見にくくなる
- 瞳孔が大きくなり、光が当たるとまぶしくなる
- 目の充血、かゆみをおこすことがある
- まれに、顔が赤くなったり発熱することがある
主な副作用は、瞳孔が大きくなること。(散瞳すること)。種類によっては副作用の時間も長いので、注意が必要です。
小児で使用する調節麻痺薬の種類
調節麻痺薬には、主に3種類あります。
- 日点アトロピン点眼薬1%
- サイプレジン点眼薬1%
- ミドリンM点眼薬0,4%
それぞれの特徴や作用時間について、順番に説明していきますね。
日点アトロピン点眼薬1%
一番調節をとる効果の強い薬です。
自宅で1日1~2滴、1日2~3回の点眼を7日間続けてもらってから屈折検査を行います。
8歳以下で内斜視や遠視、強い不同視が疑われる場合など、調節を最大限に休ませたい時に使用します。
この点眼薬を使用すると、使用後5~7日間瞳が開いた状態が続き、まぶしさやピントが合わせづらい状態が続きます。
薬の持続期間が長いため、慎重に処方されます。また、検査後は薬は自宅にてすぐに破棄してもらう必要があります。
サイプレジン1%点眼液
5~10分おきに2~3回点眼し、最初の点眼から1時間後に屈折検査を行います。
点眼薬の作用時間は1~2日間です。
アトロピンよりは効果が弱いものの、しっかりと調節を休ませることができます。
斜視が疑われる場合、弱視など視力が出づらい場合、調節がかかっていることが予想されるお子さんにはよく使用されます。
ミドリンM点眼液0,4%
5~10分おきに2~3回点眼し、30分後に検査を行います。
点眼薬の作用時間は4~5時間ほどです。
3種類の中では一番効き目の弱い薬のため、初めて眼鏡を作るときや念のため調節を休ませた状態の屈折を確認したい時などに使用します。
大人の眼底検査(散瞳検査)でも使用されるメジャーな調節麻痺薬です。
眼底検査については、こちらにまとめています。
check!!▶【眼底検査5種を解説】眼底検査って何をやるの?何が分かるの?
目薬の効き目の強さは
の順番です。
薬の効き目が切れるまで長いアトロピン点眼薬などを使用しての検査は、基本的には夏休みや冬休みなど、学校生活に支障が出にくい時期に行うことが多いです。
まとめ
ここまで、子供の目の精密検査で調節麻痺薬を使用する理由について解説しました。
最後に、この記事のポイントをまとめます。
- 調節麻痺薬の使用理由は調節を休ませるため
- 斜視や弱視、遠視の場合にこの検査が必要
- 調節麻痺薬には3種類ある
- 調節麻痺薬の主な副作用は散瞳すること